レッドゾーン [book]
~あらすじ~
投資ファンド サムライキャピタルの社長である鷲津政彦は、上海の買収王 賀一華にTOBを仕掛けられたアカマ自動車社長の古屋から相談を受ける。鷲津はTOBの黒幕が中国の国家ファンドCICであると推測するものの、彼の持つ情報網を持ってしても全体像が把握できないでいた。
やがて鷲津はアカマ自動車の「白馬の騎士(ホワイトナイト)」として矢面に立つのだが、アカマ自動車の内紛、アメリカ最大のレバレッジ・ファンドであるKKLの登場、本音を見せない香港の大財閥の怪しい動きなど多くの困難が彼に襲いかかる。
『ハゲタカ』、『バイアウト』に続くハゲタカシリーズの第3弾。
過去2作においては、多少の波乱はあるものの概ね鷲津が描いたシナリオ通りに物語が進んだが、今作では“理解しがたい”中国の動きに翻弄され、終始ペースを掴めずに展開していく。
また、過去2作は企業買収、企業再生等を題材とした本格経済小説であったのに対し、今作は国民性やそれに伴う人間の感情により物語が展開するという違いがあった。
ただ、物語に引き込む力に関しては、前作まで同様に秀逸で上下巻で900頁程度の分量にも関わらず、あっという間に読了してしまった。(唯一ケチをつけるとすると、シリーズの重要人物を無理やり登場させているように感じられたので、今作に関しては芝野の話はいらなかったかもしれない)
個人的に経済小説は好きなジャンルで以前は高杉良を中心に読んでいましたが、最近はやはり黒木亮と真山仁ですね。特に真山作品では地熱発電をテーマにした『マグマ』や、原子力を取り上げた『ベイジン』など、原発事故後に注目を集めている作品の出来も素晴らしいので、まだ未読の方は是非手に取られることをお薦めします。
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