排出権商人 [book]
~あらすじ~
大手エンジニアリング会社社員の松川冴子が、排出権を扱う地球環境室の初代室長に任命され、試行錯誤しながらも排出権ビジネスを確立していく様子を描いている。
冴子を中心とする地球環境室では、マレーシアの養豚場に始まり、中国の炭鉱、風力発電所等における温室効果ガスの削減により発生する排出権を日本の電力会社等に販売するビジネスを軌道に載せる。
ただ、その間、冴子らの会社「新日本エンジニアリング」は、アメリカの空売り専業ファンド「パンゲア&カンパニー」から執拗に空売りを仕掛けられ・・・
~感想~(内容に関する記述あり)
最終的にはLBOで地球環境室を分離し、新会社の社長に就いてしまうという展開は黒木作品らしい展開であったが、正直なところ中盤までは排出権ビジネスの解説が細かすぎて、なかなか読み進められなかった。
ただ、読み終えてみるとこれまで深く理解できていなかった「京都議定書」以降の流れを理解することができ、アメリカ・中国の参加しない現行制度の問題点が見えてきた。
と、この本を通じ、このような欠陥のある制度に縛られ、日本企業の利益を海外に流出させ続けることの問題の大きさに気付いたころ(平成23年12月)、ちょうど「日本が京都議定書の第2約束期間から離脱する」とのニュースが飛び込んできて安心しました。
ただ、このまま将来の子どもたちにツケをまわすことは決して許されることではないため、早急にアメリカ・中国も組み込んだ新たな制度の確立を急いで欲しいですね。
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