アジアの隼 [book]
~あらすじ~
日本長期債券銀行でアジア地区を担当していた真理戸は、他のアジア諸国に続き経済が沸騰しつつあるベトナムに駐在員事務所を開設すべく送り込まれる。そこでは社会主義国ならではの悪習、ベトナム公務員のたかり体質、欧米投資銀行との激しい競争などの障害が待ち受けていた。
そんな数々の試練を乗り越えつつ、駐在員事務所の開設に漕ぎ着け、さらに総額6億ドルのビックディール獲得に向け孤軍奮闘する真理戸を、今度はアジア通貨危機の波が襲う。また、並行してアジアブームに翻弄された香港の証券会社「ペレグリン」の栄枯盛衰が紹介されている。
~感想~(内容に関する記述あり)
文庫本で700ページ、なかなかの大作でした。
本書のタイトルは、アジアの隼と呼ばれた実在する証券会社「ペレグリン」から取られているが、基本的にペレグリンと真理戸は絡まないまま物語が進行する。このペレグリンの話で90年代のアジア経済の盛り上がりと、アジア通貨危機が経済界に大きなインパクトを紹介したかったのだと思うが、正直なところこれを簡略化してくれると、もっとテンポ良く読めたのではないかと思われる。
ただ作品全体をとおしては、これまであまり知ることのなかったベトナム国民の国民性、発展途上国におけるプロジェクトリスク等を丁寧に説明しつつ物語を展開するという黒木作品らしい展開で勉強になった。
特に、現在のギリシャに端を発する欧州危機の最中に読むと非常に臨場感があり、後半は一気に読みきってしまいました。本来、経済小説は鮮度が大事ですが、まだ未読の方は是非お手にとってみてください。(多少、まとまった時間が取れるときに読むことをお薦めしますが・・・)
あと、本文の感想とはずれますが、ヤモリが這うようなホテルで暮らしながら市場を開拓する日本人サラリーマンには頭が下がりますね。 私には真似できません。
2011-10-17 23:11
nice!(34)
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