魔王 [book]
~あらすじ~
「魔王」と「呼吸」という2編の連続する物語により構成される作品。前編の「魔王」は会社員の安藤が他人に“自分の思ったこと”を話させる“腹話術”という能力を身に付けたところから物語がスタートする。
また、その続編である「呼吸」では、安藤の弟 潤也が“ジャンケンで負けない”等の幸運を身に付けたことに気づいてから物語が展開する。
何れの物語においても、政治家 犬養舜二を中心に展開する国政選挙・国民投票に向けた動きのなかで、不思議な能力を身に付けた二人の兄弟の姿を描いている。
~感想~(内容に関する記述あり)
『モダンタイムス』が文庫化されるというので楽しみにしていたのだが、調べてみると『魔王』の続編とのことなので慌てて手に取った1冊。
少し前の作品のため、最近の伊坂作品ほど洗練されてない印象を受けたが、作品に引き込む力は秀逸で、超能力を使うなど突拍子もない話でありながら、ぐいぐい引き込まれあっという間に読破してしまった。
内容は政治がポピュリズムからファシズムに転換する可能性のあること、またその流れに多くの国民が気付かず流されてしまうことに対する警鐘など、ゴールデンスランバーの情報監視社会に対する警鐘同様、読みやすい作品のなかでサラッと現代社会の問題を語ってしまうあたりに好感が持てた。
ただ、続編があるとはいえ(当時、続編の話が公表されていたのか知りませんが)、「呼吸」のラストは突然話が途切れてしまう印象で少々物足りなく感じられた。(『モダンタイムス』が手元にある今読むと期待が広がる終わり方とも言えますが・・・)
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