極北クレイマー [book]
~あらすじ~
中堅外科医の今中が、スタッフの意識が低く多額の赤字を抱える過疎地の公立病院に赴任し、そこで自分の意に反し病院改革を担当することとなり、医療機能評価機構の審査や医療事故調査、自治体の財政再建団体転落に伴う病院閉鎖などの問題に次々と巻き込まれていく物語。
~感想~
海堂作品は、『チーム・バチスタの栄光』、『ナイチンゲールの沈黙』、『螺鈿迷宮』、『ジェネラル・ルージュの凱旋』、『ブラックペアン1988』、『夢見る黄金地球儀』、『イノセント・ゲリラの祝祭』、『ジーン・ワルツ』、『ひかりの剣』と文庫化された本は全て読んできたが、なかなかチーム・バチスタを超える作品には出会えていない。
チーム・バチスタ以外でも、ジェネラル・ルージュやブラックペアン、ジーン・ワルツなどは、現役の医師ならではの臨場感溢れる展開と、高いリアリティにより物語に惹きこまれたが、最近読んだ『ひかりの剣』などは、各物語内でAIの普及や疲弊する医療現場の実情を訴えてきた海道作品と異なり、何を書きたいのかが分からず質の低下を感じていた。
今回の作品でも、地方病院が抱える多くの問題が紹介されていたものの、医療事故調査、病院閉鎖等の問題について、書きっぱなしで物語を終えてしまうラストなど納得がいかない部分があった。またこの続編を考えているのかもしれないが、この辺で出版のペースを抑え、じっくりと構想を練りこんだうえで、再び読者を呻らせるような作品を世に出してくれることを期待したい。
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